【栃木県・那須塩原市】「ミルクタウン」の挑戦!酪農と共生する地産地消エネルギー循環の未来図
| カテゴリ:全国の脱炭素社会実現に向けた取り組み | タグ: ゼロカーボン, 栃木県, 脱炭素, 那須塩原市

1. 那須塩原市が目指す脱炭素社会の全体像:ゼロカーボン宣言とその目標
栃木県那須塩原市は、生乳産出額が全国2位を誇る酪農王国であり、豊かな自然と広大な那須野が原の恵みに育まれた地域です。
那須塩原市は、地球規模の課題を地域レベルで考え、その理解と問題意識を深めるため、2019年12月に「CO2排出量実質ゼロ宣言」を行いました。そのうえで、「那須野ヶ原みらい電力」の設立や脱炭素先行地域への選定を核に、再生可能エネルギーの地産地消と経済の地域内循環を目指しています。
目標達成に向けた概要は以下のとおりです。
| 計画・宣言 | 宣言時期 | 最終目標 | 目的 |
|---|---|---|---|
| CO2排出量実質ゼロ宣言 | 2019年12月 | 2050年までにCO2排出量実質ゼロ | 地球規模の課題を地域レベルで考え、理解や問題意識を深める契機とする |
2. 地域経済と地方創生を両立する「酪農×再エネ」戦略
那須塩原市では、脱炭素社会の実現に向けた取組みを、地域経済の活性化や安全安心なまちづくりに繋げるビジョンを掲げています。特に、主要産業である酪農との連携を重視しています。具体的な取組みは以下のとおりです。
2-1. 地域新電力「那須野ヶ原みらい電力」の設立
画像提供:那須塩原市
「持続可能なまち那須塩原市」の構築を実現していく取組みの担い手として、令和4年4月に地域新電力会社である「那須野ヶ原みらい電力株式会社」を設立しました。
この新電力会社は、再生可能エネルギーの地産地消と、資源および経済を地域内で循環させるという目的を掲げており、さらに地域課題の解決にも貢献することを目指しています。現在は、公共施設を中心とした再エネ電力の供給を進めており、市の脱炭素化推進における重要な役割を担っています。
2-2. 酪農産業のレジリエンス強化と地域循環
画像提供:那須塩原市
生乳産出額が全国2位を占める那須塩原市において、主要産業である酪農業の脱炭素化は地域経済の安定に直結します。酪農業は、乳牛の飼育や搾乳などで常時電力を必要とするため、停電対策の必要性が極めて高いという課題を抱えています。
この課題を克服するため、那須塩原市は再生可能エネルギーを活用した自立分散型電源の導入を促進しています。この戦略は、地域の脱炭素化に貢献するとともに、平時におけるエネルギーの地産地消と経済の地域内循環の実現を目指すものです。
3. 那須塩原市の具体的な脱炭素への取り組み
市は、脱炭素先行地域でのモデル事業、企業との連携、そして市民への支援を通じて、気候変動対策の具体的な成果を目指しています。具体的な取組みは以下のとおりです。
3-1. 「脱炭素先行地域」によるモデル構築
那須塩原市は、地域特性を活かした脱炭素化の先進事例として、環境省が募集する「脱炭素先行地域」に令和4年11月に選定されました。
この先行地域事業は、「ミルクタウン那須塩原のチャレンジゼロカーボン~青木地区ゼロカーボン街区構築事業~」と題されています。
その名のとおり、市内で最も酪農が盛んな青木地区を対象としています。この事業は、単にCO2を削減するだけでなく、主要産業である酪農業を含む地域の災害や非常時に強いレジリエンス(強靭性)の強化を同時に推進することを核心としています。これにより、地域経済の安定と持続可能なまちづくりへの貢献を目指します。
3-2. 官民連携による脱炭素経営支援
画像提供:那須塩原市
那須塩原市は、地域企業の脱炭素経営を後押しするため、官民が連携した強固な支援体制を構築しています。その中心となるのが、令和7年1月に設立された「那須塩原市ゼロカーボン・コンソーシアム」です。
このコンソーシアムには、那須塩原市、地元銀行、そして脱炭素ソリューションを有する企業が参画し、約20社の地域企業の課題解決を支援しています。さらに、那須塩原市は脱炭素経営を始める企業を具体的に支援するため、中小企業向けのSBT認定取得補助金や脱炭素アドバイザー資格取得補助金を行っています。
3-3. 再生可能エネルギー導入推進と環境整備
那須塩原市は、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの導入を推進するとともに、地域との調和を図るための環境整備にも注力しています。再生可能エネルギー導入推進として、公共施設への太陽光発電設置を促進しているほか、発電事業と地域との調和を図るため、再生可能エネルギーゾーニングマップを作成し、適切な設置場所への誘導を行っています。
また、EV導入に向けた環境整備として、公共施設へのEV充電器設置も進められています。同時に、市民向けには電気自動車(EV)の購入補助金を実施しています。
3-4. バイオガス発電への関心と今後の検討
那須塩原市の主要産業である酪農から発生する家畜ふん尿は、貴重なエネルギー資源として注目されています。那須塩原市は、このふん尿を活用したバイオガス発電に関心を持って調査検討を進めている段階です。
しかしながら、その過程で生じる消化液の処理などに課題を有しており、その活用について具体的な調査検討が行われています。
3-5. その他の事例:全世代への啓発活動
画像提供:那須塩原市
那須塩原市は、気候変動や脱炭素を市民に身近に感じてもらうため、全世代を対象とした啓発活動を幅広く展開しています。
| 取り組み名 | 実施内容 | 目的 |
|---|---|---|
| イベント参加による啓発 | 市内イベントで、気候変動対策に関する展示や子ども向けの脱炭素カードゲームを実施。 | 気候変動や脱炭素を身近に感じてもらう。 |
| 生涯学習出前講座の活用 | 市民の要請に応じ講師を派遣し、「気候変動についてみんなで考えよう!」といったテーマで、影響や対策を伝える。 | 市民一人ひとりの気候変動への理解促進。 |
4. まとめ
画像提供:那須塩原市
那須塩原市は、「那須野ヶ原みらい電力」の設立や「ゼロカーボン街区」構築というプロジェクトを立ち上げ、脱炭素化を地域課題の解決と結びつけて推進しています。
この取組みは、CO2排出量実質ゼロの達成だけでなく、災害など非常時に強く、暮らしやすい魅力的な「持続可能なまち那須塩原市」の構築に向けた、確かな一歩となるでしょう。
最後に、この取組みを推進する那須塩原市担当者から、皆様へメッセージをお届けします。
皆さんが「ここに住んでいれば安心」「ここに住んでいれば生き延びられる」と実感できるような、災害や非常時に強い「持続可能なまち那須塩原市」の構築を推進していきたいと思います。
監修

エコ発事務局 太陽光アドバイザー
曽山
『誠実、スピーディーな応対』をモットーに日々エコ発を運営しています。 お客様への応対だけでなく全国に数百ある提携業者様とのやり取りをはじめ、購入者様へのキャンペーン企画やウェブサイトの改善など、皆様のお役に立てるよう日々業務に取り組んでいます。 卒FIT後の太陽光発電の活用方法など、お困りごとがございましたら、お問い合わせにてお気軽にご相談下さい。
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