蓄電池で「元が取れない」はウソ?経済効果を徹底検証!
公開日:2020/10/19 | 最終更新日:2022/12/11 | カテゴリ:蓄電池の価格・費用について

今回は、蓄電池で元が取れる(イニシャルコストをランニングコストで回収できる)かどうか、を徹底検証していきます。
結論からお伝えすると、蓄電池単品での導入では「元を取ることは非常に難しい」ですが、太陽光発電やHEMS(ホーム・エネルギー・マネージメント・システム)、エコキュートなどと組み合わせることで、事情は大きく変わります。
今回は、太陽光発電などとのセット導入でどれくらい経済効果が見込めるのか?を実際の市場価格を基に徹底検証していきます。
まずは、今回の記事の重要ポイントのまとめです。
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目次
蓄電池の経済効果
蓄電池を導入することで、様々なメリットが見込めます。
蓄電池は、災害などの停電が発生した場合に、緊急的に電気を使うことができるだけでなく実は平常時も充電・放電によって経済効果が見込めます。
ここでは、蓄電池による経済効果はどんな効果なのか?をみていきましょう。
安い深夜電力を利用すること
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(出典:ニチコン株式会社「ESS-H2L1」)
まず1点目の使い方としては、深夜電力を活用する方法です。
各電力会社によって、時間帯別契約の電力単価が異なりますが、全ての電力会社で深夜電力の単価は比較的安く設定されています。
例えば、東京電力のスマートライフプランでは、17.78円 / kWh となっており、日中の25.80円 / kWh と比べると約3割ほど安い単価になっています。
蓄電池の運転方法は主に2つあり、まずは1点目の「深夜電力を充電して、買電単価の高い時間帯に放電する」使い方です。
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(出典:東京電力エナジーパートナー株式会社「スマートライフ」)
この使い方は、17.78円 / kWh の深夜時間帯の電気を蓄電池に充電し、昼間に25.80円 / kWhを購入せずに自家消費する使い方です。
この使い方では、単純に25.80円ー17.78円=「8.02円 / kWh × 蓄電できる容量」が節約額となってきます。
2022年現在、主流となっている住宅用蓄電池の容量は7~10kWh前後です。
単純に10kWhの蓄電池を導入した場合、実質的に使用できる容量が約9割であることを考慮し、「8.02円 / kWh × 蓄電できる容量:9kWh」が1日の最大節約額です。
72.18円 / 日 の節約額で、年間でも26,345円の節約効果となります。

時間帯別契約の日中の時間帯の単価が高く設定されている、中部電力の例もみてみましょう。
※再生可能エネルギー賦課金は差額のため考慮せず
※上記試算には燃料調整費含まず
◆中部電力のスマートライフプランの場合:48,621円 / 年間の経済効果
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(出典:中部電力ミライズ株式会社「スマートライフプラン」)
平日・日中の単価 38.81円 / kWh ー 深夜電力単価 16.30円 / kWh =22.51円
休日・日中の単価 28.52円 / kWh ー 深夜電力単価 16.30円 / kWh =12.22円
平日を240日、休日祝日を仮に125日とします。
平日:22.51円 / kWh × 9kWh × 240日 = 48,621円 / 年間の経済効果
※再生可能エネルギー賦課金は差額のため考慮せず
※上記試算には燃料調整費含まず
このように、日中の単価と深夜電力の単価の差が多い電力プランで考えた場合でも、年間で48,621円と経済効果としてはそこまで多いとは言い切れません。
10kWhの蓄電池が、市場価格としては約130万円以上することを考えると単純に27年かかる計算になり、現実的に「元が取れるとは言いにくい」です。
ただし、この使い方は一番経済効果が薄い使い方です。
太陽光発電との組み合わせる、もう1つの運転方法での経済効果を続いてみていきましょう。
太陽光発電の余剰電力を充電する方法
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(出典:ニチコン株式会社「ESS-H2L1」)
2つ目の運転方法は、太陽光発電システムと組み合わせて使う方法です。
太陽光発電システムと同時に導入していただく際には、できれば「ハイブリッド型蓄電池」をオススメします。
理由としては、パワコンが1つで済む機種が多いこと(機種によって異なる)、停電時にも太陽光から十分な充電を確保できるからです(単機能でも一部同様の機能がある)。
さて、具体的な経済効果を検証していきましょう。
運転方法は、太陽光発電の余剰電力を蓄電池へ充電し、夜間や雨天時の日中にも使うことができます。
太陽光発電と組み合わせることで、実は経済効果がグッと引きあがります。
太陽光発電のメリットとして、晴れている日中に発電を行いますが、電気代が高い日中の時間帯に太陽光発電で創った電気を、家の中で利用することができます。
これを「自家消費」と言いますが、実はこの自家消費の重要性が年々上がってきており、この効果が理解できていないと、蓄電池の本来の効果が理解できません。
この「本来の効果」をまずは解説していきたいと思います。
「高い電気代を買わない効果」と「余剰電力を活用する効果」
太陽光発電+蓄電池による効果は、「高い電気代を買わない効果」と「余剰電力を活用する効果」の2つがあります。
ここの2つの経済効果をしっかり見極めた上で、蓄電池の導入の検討をしていきましょう。
高い電気代を買わない効果
昨今、電気代だけでなく物価の上昇が見過ごせない状況になってきています。
世界的にもインフレが進行しており、根深い問題でカンタンに解決できる問題でもなさそうです。
電気代の上昇は、原油価格の上昇が一番反映されますが、それ以外にも「再生可能エネルギー賦課金の一方的な上昇」、電力会社によっては夏季の昼間を高い電気代を設定して、ピークシフトをしたり、と高くなる要素ばかりです。
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(出典:経済産業省資源エネルギー庁「電気料金はどのように変化していますか?」)
上図は資源エネルギー庁からの引用ですが、2017年から比較しても2022年以降は単価はさらに上がっています。
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(出典:一般社団法人エネルギー情報センター「燃料費調整単価の推移」)
そして電気代の燃料調整費も、しばらく値引き状態が続いていましたが、2022年以降ついにプラスへ転じて値上げの一因にもなっています。
このように電気代が高くなっている、という事実はありますが、一般的な生活を送るためには電気が必須になっています。
電力会社の買電単価が高くなっていけば、太陽光発電・蓄電池などで自給自足ができた分、効果としては大きくなっていきます。
もともと、太陽光発電も蓄電池も無い状態であれば、使用している電気の100%を電力会社からの購入電気でまかなう状態です。
この状態で、太陽光発電単体、そして蓄電池をセットで設置するとどれくらいの「自家消費率」になるか?をみていきます。
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(出典:パナソニック株式会社「蓄電池カタログ」)
上図は、パナソニックのカタログからの引用ですが、太陽光発電のみでは発電をしている時間帯にリアルタイムで使っている家電などでの自家消費を行います。
この太陽光発電の自家消費により、全体の約34%が自給率と考えると、一般家庭において「毎月の電気代の請求が約3割減る」ということになります。
売電収入にように毎月報告がわざわざ来るシステムではないため、HEMSなどで発電量などと合わせて計算していないと、分かりにくい効果ではあります。
ここに蓄電池を導入するとどうなるか?ですが、昨今主流となりつつある10kWh前後の蓄電池の場合で考えると、自給率が86%となっています。
自給率が86%となると、雨天が続いた時や深夜電力で運転させるエコキュートぐらいしか、電力会社から買っている電力がない状態です。
太陽光発電、そして蓄電池がある場合、この目に見えない「自家消費」の効果を見極める必要があります。
自家消費による効果は年間 約15万円
東京電力のスマートライフプランで試算をしてみましょう。
オール電化における一般的な平均電力使用量としては約600kWhと言われています。 このうち、主に深夜電力で運転させるエコキュートの使用電力は120~150kWhであり、残りの450~480kWhを太陽光発電および蓄電池でどれだけ節約できるか?をみていきましょう。
日中および夜間の使用電力量が480kWhであった場合の電気代としては、
25.80円 / kWh +3.36円(再生可能エネルギー賦課金) × 480kWh = 13,996円 / 月
になってきます。
17.78円 / kWh の深夜時間帯に、エコキュートで120kWh消費したとしても、
17.78円 / kWh +3.36円(再生可能エネルギー賦課金) × 120kWh = 2,536円 / 月
※燃料調整費は含まず
で1ヶ月の合計の電気代は16,532円となって、こちらを試算のベースにしていきます。
蓄電池11kWhを導入するとどうなるか?ですが、自給率が86%となっていた部分を単純に考えると、600kWh(1ヶ月で使う電気)× 86%減 = 「84kWh」 が1ヶ月に電力会社から購入する電気代となります。
実際はこの84kWhは深夜電力の時間帯の購入量が多くなりますが、雨天つづきの場合なども考慮しここでは単純に深夜電力・日中の電気代の平均として、単価25.15円(再エネ賦課金含む)としましょう。
ただしパナソニックの自給率の根拠では1ヶ月の使用量を500kWhとしていますので、足らない100kWh分を加算しておくことにします。
(84kWh+100kWh) × 25.15円(再エネ賦課金含む平均買電単価)=4,627円 / 月 になります。
単純計算ではありますが、元々かかっていた電気代16,532円 - 導入後試算 4,627円となり、月額の効果としては11,905円となります。
電気代は様々な要因で上下するので、参考程度ではありますが年間で142,860円の効果が見込める計算になります。(11,905 × 12ヶ月)

余剰電力を活用する効果
つづいて、太陽光発電があると日中に余剰電力が出た場合、買取を行ってくれます。
この買取単価が一時期に比べて安いため「効果が薄い」と考える方が少なくありません。
しかし、注目すべきポイントは「安いままの単価で売ってしまうのではなく蓄電池へ溜める」という部分が注目すべき点です。
先ほどのパナソニックの自給率の計算でもあったように、太陽光発電が5~6kW程度南面に載っていれば1日で20kWh~25kWhは発電します。そのため発電分をできる限り自家消費 + 蓄電池に充電しても余剰電力が発生します。
その場合、2021年度の余剰電力買取単価が19円、2022年度は17円(いずれも10kW未満)での買取になります。6kWの太陽光発電で年間発電量が約7,000kWhとして70%を自家消費 + 蓄電池に充電。30%(2,100kWh)を仮に売電したとすると、
- 2021年度単価:39,900円 / 年間売電額 (※月額 3,325円)
- 2022年度単価:35,700円 / 年間売電額 (※月額 2,975円)
が売電金額になってきます。
FIT制度の下では10年の買取期間中は買取単価が保証されているため、全期間における売電効果は約40万円~35万円(上記した年間売電金額 × 10年)となります。
また、10年後は買取期間が終了するために買取単価は一気に下がってしまい、約6円~9円程度(2022年の相場)まで大幅に下落します。ただ、買取単価は下がってしまいますが売電を継続することは可能です。
※7円での買取の場合:14,700円 / 年間売電額 (※月額 1,225円)
このように、売電量を引き下げてできるだけ自家消費にしても、余剰電力買取がある以上は経済効果としてプラスになります。
今後はエコキュートやEVへ余剰電力を活用
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(出典:日産自動車株式会社「リーフ」)
ここからは今後の話ですが、余剰電力をできるだけ自家消費させるための策として有効なアイテムが「エコキュート」と「EV(電気自動車)」です。
エコキュートは普段、深夜電力で運転しますが深夜電力も値上がりが続いていますので、深夜電力で運転する量を最小限にして、太陽光発電の余剰電力で昼間に運転させる方法があります。
もっとも、エコキュートは昼間の空気中の熱を回収してくるため、昼間の暖かい時間帯に運転した方が効率が良いです。
また、EVについては大容量で充電することができるため、太陽光発電の余剰電力の多くを自家消費へ回すことができます。
太陽光発電の容量が3kW未満といった少ない容量の場合、EVへの充電まで余剰電力が発生しない可能性が高いですが、5~6kW以上搭載している方であれば、余剰電力の充電も可能です。
太陽光発電の余剰電力を、車の走行エネルギーへ変換する、ガソリン代の代わりにする、という新しい発想もできます。
今後は、こういったエネルギーの自給自足で節約できる時代になっていくでしょう。
太陽光発電+蓄電池のセットで「元が取れる可能性もある」
ここまで長く解説していきましたが、上記の経済効果をまとめると以下の通りになります。
- 自家消費の経済効果:年間 142,860円
- 太陽光発電の売電金額:当初10年間 35,700円 ※22年度単価
- 太陽光発電の売電金額:10年目以降 14,700円 ※7円計算
一般的な国内メーカーや海外の太陽光発電システムは15年保証が多く、蓄電池は無償で10年・有償で15年という保証が多いため、今回は保証期間である15年で計算をしてみます。
そうすると、15年分の経済効果としては、約257万円になります。
- 自家消費の経済効果:年間 142,860円 × 15年 =2,142,900円
- 太陽光発電の売電金額:当初10年間 35,700円 × 10年 =357,000円
- 太陽光発電の売電金額:10年目以降 14,700円 × 5年 =73,500円
2022年時点で、市場価格としては、5kW太陽光120万円+蓄電池10kWh程度180万円=300万円税抜(工事費込)となっており、単純には45万円のマイナスとなります。
しかし、今回の試算は東京電力のスマートライフプランで試算しておりますので、比較的日中の電気代が安いプランで試算しています。
他の電力会社のプランによっては、元を取ることも不可能ではありません。
また15年目時点での経済効果を示しましたが、単純には約18年で初期コスト分の「ペイ」ができます。
蓄電池は災害対策としても使える
また、設置費用は高額なので元を取ることも重要だとは思いますが、蓄電池は停電時にも電気が使えるという災害対策のひとつとして非常に重要な側面も持っています。
太陽光発電や蓄電池の設置に国や各都道府県が率先して補助金を出して普及を推進しています。あれば便利なものではなく、今後はあって当たり前のものとして確実に浸透していくでしょう。
今後必ず設置することになるならば、10数年後に設置費用が回収できなおかつすぐにでも停電対策が出来る…蓄電池の設置は早ければ早いほど得をすると言っても過言ではありません。
エコ発蓄電池では複数の会社へ一括見積もりを行うサービスを取り扱っています。できるだけ安く信頼できる業者に蓄電池の設置をお願いしたいというならば相見積もりは必須です。お見積もり依頼は無料ですのでお気軽にお問い合わせ下さい。

まとめ
蓄電池メーカーや、商品、組み合わせ方法、電力会社のプランによって様々ですが、一般的な試算で見ても「元が全く取れないわけではない」ことが計算上お示しできました。
なお、今回の試算には補助金が含まれていないこと、そして買電単価の上昇率を考えていません。
補助金はあればラッキーという程度ではありますが、燃料調整費の高騰・原油価格の上昇・再エネ賦課金の上昇などで、今後買電単価が上がっていくことは想像に難くありません。
これらを考え、さらに蓄電池があることにより
- 災害時の緊急電源になる
- EVを購入すれば、EVへ安価に充電ができる
- V2Hシステムも組み込むと、EVを蓄電池代わりにできる
などなど、蓄電池が今後のエネルギーの拡がりをもたらしてくれ、この値上げラッシュに怯えなくていい、という点は金額に出てこないメリットと言えます。
今回の記事を参考に、ぜひ蓄電池(太陽光発電のセットで)の検討をしてみてください。
監修

エコ発事務局 太陽光アドバイザー
曽山
『誠実、スピーディーな応対』をモットーに日々エコ発を運営しています。 お客様への応対だけでなく全国に数百ある提携業者様とのやり取りをはじめ、購入者様へのキャンペーン企画やウェブサイトの改善など、皆様のお役に立てるよう日々業務に取り組んでいます。 卒FIT後の太陽光発電の活用方法など、お困りごとがございましたら、お問い合わせにてお気軽にご相談下さい。
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