【熊本県・球磨村】豪雨災害を教訓に「地域新電力」が主導する創造的ゼロカーボン復興
| カテゴリ:全国の脱炭素社会実現に向けた取り組み | タグ: ゼロカーボン, 熊本県, 球磨村, 脱炭素

1.球磨村における脱炭素
熊本県球磨村は、日本三急流の一つである球磨川と、その両岸に広がる山々に囲まれた、林業が盛んな地域です。
村は、2020年7月の豪雨災害という甚大な被害を経験したことを教訓に、2021年3月に球磨村復興計画を策定し、主要施策の1つに「地域コミュニティの再生と脱炭素のむらづくり」を掲げ、当年6月にはゼロカーボンシティ宣言を行い、脱炭素への取組みを推進していく意思表示を行いました。
その後、球磨村及び球磨村森林組合、球磨村森電力3者の共同提案のもと、環境省が募集する脱炭素先行地域に事業計画を提出し、第1回目の脱炭素先行地域として認定されました。
目標達成に向けた概要は以下の通りです。
| 計画・宣言 | 宣言時期 | 最終目標 | 中間目標 |
|---|---|---|---|
| ゼロカーボンシティ宣言 | 2021年6月 | 2050年度温室効果ガス排出量実質ゼロ | 2030年度目標:50%削減(2019年度比) |
| 脱炭素先行地域 | 2024年6月 | 2030年度温室効果ガス排出量実質ゼロ(民生部門) |
2. 地域経済と地方創生を両立する「地域新電力」戦略
画像提供:球磨村
球磨村の脱炭素戦略は、地域新電力会社「㈱球磨村森電力」が中心となり、エネルギーと資金、そして雇用を地域内で循環させる「地域循環共生圏」モデルです。
これは、他市町村よりも生活コストを抑えて居住できる魅力を創出し、地方創生に繋げることを目的としています。
2-1. 再エネ導入による低廉な電力供給と地域還元
村は、脱炭素先行地域の事業を通じ、大規模にPPA型太陽光発電設備及び村内供給用電源の整備を進めています。この戦略により、地域経済活性化を図るとともに、「脱炭素はコストや不便を強いるものではない」という認識を広げることを目指しています。
2-2. 地域課題の解決と雇用創出への貢献
地域新電力会社は、エネルギー供給の役割に加え、地域課題の解決と雇用創出に貢献しています。
- 地元雇用: 2025年からは新たに地元住民を雇用し、地域循環を拡大。
- 課題の掘り起こし: 現地雇用した方が営業を兼ねて村内各地区を回ることで、潜在的な地域課題の掘り起こしを行っている。
3. 球磨村の具体的な脱炭素への取り組み
球磨村は、脱炭素先行地域事業を主軸に、太陽光発電の導入、林業の脱炭素化、そして交通分野への先進的な取り組みを加速させています。以下ではそれらの取り組みをより詳しく紹介していきます。
3-1. 事例①:大規模太陽光発電導入と災害対策
PPA型太陽光発電が設置された木質バイオマス施設 画像提供:球磨村
2022年度から始まった脱炭素先行地域事業により、太陽光発電設備を大規模に導入しています。
- 導入状況: 避難場所に指定されている公共施設から優先的に導入を推進。2025年10月現在、23個所、1.5MW(DC)の太陽光発電設備と1.5MWhの蓄電池の設置を完了。
- 目的: 地震・豪雨といった災害に強いレジリエンスの強化と、エネルギーの地産地消を推進。
3-2. 事例②:林業のゼロカーボン化と市場競争力強化
村内最大の事業者である球磨村森林組合と連携し、林業の脱炭素化を推進しています。
| 連携内容 | 導入設備 | 成果/目標 |
|---|---|---|
| 資源循環 | 木材製材過程の残渣を活用した木質バイオマスボイラーを導入。 | 廃棄物利用と熱源の確保。 |
| エネルギー | 製材機会やボイラー稼働電力をPPA型太陽光発電で賄う。 | 林業のゼロカーボン化、市場競争力の強化。 |
| 実績 | 球磨村森林組合では、約40%の電力を太陽光で賄い、電気料金を16%低減。 | コスト削減を実証。 |
3-3. 事例③:交通分野の脱炭素化と先進的実証事業
球磨村でのEVバス実証風景 画像提供:球磨村
交通分野では、先進的なEVバスの実証事業で成果を上げ、公用車・EVバスの導入を計画しています。
- EVバス実証: 熊本大学によるスクールEVバスの実証事業を実施し、「令和6年度気候変動アクション環境大臣表彰(気候変動アクション大賞)」を受賞。
- 今後の計画: 実証結果を活かし、脱炭素先行地域事業の中でEV公用車並びにEVバスの導入およびEV充電器の設置を計画。
3-4. 事例④:地域課題解決型小水力発電の検討
現在の球磨村の生活用水路 画像提供:球磨村
脱炭素先行地域事業と並行して、小水力発電設備の導入に注力しています。
- 検討場所: 既存の生活用水路を活用した構成で検討。
- 目的: 地元水利組合の大きな負担となっている用水路の修繕を兼ねた工事を行い、修繕・清掃の負担を低減するという地域課題解決を目的とする。
3-5. その他の事例:全世代への意識醸成と教育
広報活動や教育を通じ、脱炭素への意識醸成を図っています。
- 広報活動: 村内広報誌に連載記事枠を設け、脱炭素に関するコラムや先行地域事業の進捗報告を掲載。
- 学校連携: 村内の小学校5、6年生向けに太陽光発電設備に関する環境学習を実施。高校向けには「脱炭素と地域振興」をテーマに授業を実施し、PPA方式への驚きの声が寄せられた。
4. 球磨村の脱炭素への挑戦:展望と未来への復興
球磨村は、甚大な豪雨災害を教訓として、脱炭素化を「コスト」ではなく「創造的復興」と「地域課題解決」のための手段と位置づけ、安価な電力供給と地域還元を実現しつつ、ゼロカーボンを力強く推進しています。
最近では、民間出資100%の地域新電力会社がPPAを含む再エネ電源の整備を担うという強力な体制を敷いています。
- 強み: 民間出資100%の地域新電力が、PPAを含む再エネ電源整備及び小売電気による供給を担う。
- 地域課題解決: 地域課題解決のために収益の一部を還元していくことに主眼を置き、現地雇用した方が潜在的な地域課題の掘り起こしを行うなど、地域循環を拡大している。
5. まとめ
PPA型太陽光発電が設置された公共施設 画像提供:球磨村
球磨村が推進するゼロカーボンビレッジ創出事業は、2020年豪雨災害からの「創造的復興」を原動力としています。
特に地域新電力「㈱球磨村森電力」を核に、大規模なPPA型太陽光発電と蓄電池の導入、林業のゼロカーボン化、そしてEVスクールバスの実証といった先進的な取り組みを推進しています。これにより、村は安価な電力供給と地域還元を実現し、災害に強く、生活コストを抑えられる「ゼロカーボンビレッジ」の実現を目指しています。
最後に、この持続可能なまちづくりを推進する球磨村担当者から、住民・事業者の皆様への大切なメッセージをお届けします。
脱炭素と聞くと、コストをかけたり不便を強いられながら進めていくというイメージがあるかもしれません。そういったことを踏まえて、球磨村では、創造的復興そして地域課題解決のための手段として脱炭素を位置づけ、安価な電力供給と地域還元を実現しつつ脱炭素を進めています。
監修

エコ発事務局 太陽光アドバイザー
曽山
『誠実、スピーディーな応対』をモットーに日々エコ発を運営しています。 お客様への応対だけでなく全国に数百ある提携業者様とのやり取りをはじめ、購入者様へのキャンペーン企画やウェブサイトの改善など、皆様のお役に立てるよう日々業務に取り組んでいます。 卒FIT後の太陽光発電の活用方法など、お困りごとがございましたら、お問い合わせにてお気軽にご相談下さい。
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