【島根県・松江市】観光と環境を融合!「堀川遊覧船」電動化で挑むゼロカーボン戦略
| カテゴリ:全国の脱炭素社会実現に向けた取り組み | タグ: ゼロカーボン, 島根県, 松江市, 脱炭素

1. 松江市におけるゼロカーボン宣言
島根県松江市は、宍道湖と中海に囲まれ、国宝松江城を中心とした美しい水辺の景観を持つ「水の都」です。市は、この恵まれた自然と、国際文化観光都市としてのブランドをさらに強化するため、脱炭素を地域産業・経済の活性化に繋げる戦略を推進しています。
その取り組みの一環として、2020年12月にゼロカーボンシティ宣言を表明しました。目標達成に向けた概要は以下の通りです。
| 計画・宣言 | ゼロカーボンシティ宣言 |
|---|---|
| 宣言時期 | 2020年12月 |
| 最終目標 | 2050年温室効果ガス排出量実質ゼロ |
| 中期目標 | 2030年までに2013年度比で47%削減 |
また、市は「松江市環境基本計画」において「脱炭素社会の実現」を重点目標とし、以下の3つのプロジェクトを推進するための指針を策定しました。
- スマートライフ推進プロジェクト: 省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの積極的な導入。
- 4R推進プロジェクト: ごみの分別、減量化、資源化、さらに食品廃棄物の削減。
- 自然共生プロジェクト: 自然環境や都市景観の保全に取り組み、次世代へ継承。
2. 地域経済活性化と地方創生を両立する脱炭素戦略
松江市の脱炭素への取り組みは、地域の魅力を高めるとともに、経済・社会・環境の三側面から地域創生を推進するための戦略的手段と位置づけられています。具体的には以下のような取り組みがあります。
2-1. 観光資源と脱炭素の融合による産業の活性化
堀川遊覧船の様子 画像提供:松江市
観光と環境の融合による観光産業の活性化を図るため、環境に配慮した新しい観光スタイルの創出に取り組んでいます。
- 堀川遊覧船の電動化: CO₂排出を抑え、静音性や環境配慮によって観光体験の質の向上を図る。
- Jブルークレジット®活用: 移動時のCO₂を藻場による吸収でオフセットし、環境にやさしい旅行商品の提供を実現。
これらの施策を通じ、市は「世界から選ばれる・世界中から人が集まる・世界に誇れる」持続可能な観光都市の実現を目指しています。
2-2. 地域ぐるみの金融連携による脱炭素経営支援
脱炭素社会実現に向けた地域の支援体制を構築し、エネルギーの地産地消と地域振興を図ることを目指しています。
- カーボンニュートラルに関する連携協定: 地方銀行(山陰合同銀行)および電気小売事業者(中国電力)と連携協定を締結。
- 目的: 地域循環型の再生可能エネルギー開発プラットフォームの構築を通じた、エネルギーの地産地消と地域振興。
- スキーム: 地方銀行の子会社が市有の遊休地に太陽光発電設備を設置し、発電した電力を電気小売事業者が公共施設などへ供給。設備の設計・施工を地域の中小事業者が行うことで、地域内での経済循環を促進する。
3. 松江市の具体的な脱炭素への取り組み:再エネと企業連携
松江市は、脱炭素先行地域への選定を機に、再エネと電化への移行を加速させ、特に観光地の脱炭素化と中小企業の支援に注力しています。具体的には以下のような取り組みがあります。
3-1. 事例①:脱炭素先行地域での再エネ導入と観光地全体の脱炭素化
画像提供:松江市
市は、2023年4月に環境省より「脱炭素先行地域」に選定され、カーボンニュートラル観光の実現に向けた取り組みに注力しています。
| 導入施策 | オフサイトPPAによる太陽光発電導入(約4.0MW計画) |
|---|---|
| 対象施設 | 市所有の複数の遊休地 |
| 目的 | 指定エリア内の公共施設や民間宿泊施設へ再エネを供給。 |
| 熱利用システム | 温泉地エリアの民間宿泊施設 |
| 省エネ推進 | 温泉排水熱利用システムの活用、高効率給湯器の導入。 |
| 観光地全体 | 民間宿泊施設へのソーラーカーポートの設置、高効率照明の導入など。 |
3-2. 事例②:中小企業の脱炭素経営支援(松江市Green経営スクール)
松江市Green経営スクールの様子 画像提供:松江市
市は、民間保険会社(東京海上日動火災保険)と地元商工会議所との連携協定に基づき、地元中小企業の脱炭素経営を支援する伴走型の取り組みを実施しています。
- 実施内容: 「松江市Green経営スクール」を開催。市内の製造業、建設業、観光業、産業廃棄物処理業など5社が参加。
- プログラム: 講義による基礎知識習得、地元銀行提供のGHG(温室効果ガス)排出量算定ツールを活用した自社のCO₂排出量把握、削減計画の策定。
- 成果: 参加企業から「自社で脱炭素経営を進めたい」「算定ツールは非常に有効」といった前向きな声が寄せられ、地域全体の脱炭素化の機運醸成につながっている。
3-3. 事例③:市民と行政が協働する多様な啓発活動
まつえ環境市民会議の活動の様子 画像提供:松江市
市民・事業者・行政が連携し、身近な環境活動や環境教育を通じて、全世代の理解促進に努めています。
| 啓発・教育活動 | 連携主体 | 実施内容 |
|---|---|---|
| まつえ環境市民会議 | 市民・事業者・行政 | 自然環境の保全、ごみの減量、地球温暖化防止、環境教育の推進など4つのテーマで身近な環境活動を実施。 |
| 体験学習「ゼロカーボンチャレンジ」 | まつえ環境市民会議、大学生 市民 | 国宝松江城から学ぶ環境学習や、環境について楽しく学ぶ親子体験教室を実施。脱炭素にまつわる様々な体験ができるイベントを開催し、ライフスタイルの転換を促進。 |
3-4. 事例④:次世代への環境教育
学校教育の場や、市民活動を通じて、次世代を担う子どもたちの環境意識向上を図っています。具体的には、市内の小学生を対象に夏休み期間中に家庭で取り組む「省エネチャレンジシート」を実施しており、この活動は個人会員である一般市民がスタッフとして運営しています。
4. 松江市の脱炭素への挑戦:課題と未来への展望
松江市は、再生可能エネルギー導入と電化に主軸を置き、脱炭素先行地域としての取り組みを力強く推進しています。その挑戦は、自然環境の保全と一体となって進められている状況です。
しかしながら、市内製造業の熱需要への対応という課題にも直面しています。具体的には、電化以外のエネルギー転換(水素やアンモニア利用など)が今後の重要な検討課題となっています。
また、事業推進にあたっては、財源と人材の不足も課題です。これに対し、市は地域脱炭素移行・再エネ促進交付金を活用するとともに、脱炭素先行地域として共同提案を行った12の自治体・団体と連携し、課題解決と事業の推進を図っています。
5. まとめ
画像提供:松江市
松江市が推進するゼロカーボン戦略は、「国際文化観光都市」のブランドを活かし、観光と環境を融合させる独自のモデルです。
堀川遊覧船の電動化やオフサイトPPAによる観光地全体の脱炭素化を推進し、金融連携による伴走型企業支援を通じて地域経済の好循環を目指しています。松江市は、市民・事業者・行政が一体となり、「世界から選ばれる」持続可能で誇れるまちの実現を加速させていく方針です。
最後に、この持続可能なまちづくりを推進する松江市担当の方から、市民・事業者の皆様へのメッセージをお届けします。
普段の生活において、私たち一人ひとりが「脱炭素」を心がけることによって、気候変動、地球温暖化といった世界的な課題が解決に向かうものと捉えています。行政だけで進めるのではなく、市民・事業者の皆さんと一緒に、持続可能で誇れるまちを築いていきたいと考えています。
監修

エコ発事務局 太陽光アドバイザー
曽山
『誠実、スピーディーな応対』をモットーに日々エコ発を運営しています。 お客様への応対だけでなく全国に数百ある提携業者様とのやり取りをはじめ、購入者様へのキャンペーン企画やウェブサイトの改善など、皆様のお役に立てるよう日々業務に取り組んでいます。 卒FIT後の太陽光発電の活用方法など、お困りごとがございましたら、お問い合わせにてお気軽にご相談下さい。
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