【北海道・奥尻町】離島の課題を克服!再エネフルメニューで実現する「サステナブル・アイランド奥尻」
| カテゴリ:全国の脱炭素社会実現に向けた取り組み | タグ: ゼロカーボン, 北海道, 奥尻町, 脱炭素

1. 奥尻町が目指す脱炭素社会の全体像:離島の自然を守る決意
北海道の南西部に浮かぶ奥尻島。この町は、豊かな水産資源と雄大な自然に囲まれた離島という特性を持ちます。
奥尻町は、地元の豊かな自然を将来にわたり守り抜くため、地球温暖化対策への取り組みが不可欠であると考え、2022年12月にゼロカーボンシティ宣言を行いました。
この宣言は、離島という立地特性を活かした総合的な温室効果ガス削減対策を推進していくことを明確にしています。
目標達成に向けた概要は以下の通りです。
| 計画・宣言 | 宣言時期 | 長期目標 | 短中期目標 |
|---|---|---|---|
| ゼロカーボンシティ宣言 | 2022年12月 | 2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロ | 2030年度において2013年度比46%削減 |
2. 地域経済活性化と地方創生を両立する「エネルギーの島内循環」戦略
奥尻町は、脱炭素化を単なる環境対策としてではなく、地域経済の活性化と関係人口増加に繋がる、持続可能な地方創生戦略として展開しています。
2-1. 離島特有の課題克服:「燃料代の島内循環」
奥尻島の脱炭素社会のイメージ図 画像提供:奥尻町
現在、奥尻町の電力は、町外からフェリーで燃料を輸送して行う火力発電が大部分を占めており、その結果、多額の燃料代が継続的に町外へ流出しているのが現状です。
この課題を解決するため、バイオマス・地熱・風力・水力・太陽光といった地域資源を活用し、地域共生型・自家消費型の再生可能エネルギーの導入を進めています。島内でエネルギーを生み出し消費する仕組みに転換することで、これまで町外へ流出していた燃料代を島内で循環させ、地域経済の活性化を図ることを目指しています。
さらに、町外の燃料に依存しない体制づくりは、経済面だけでなく災害時のレジリエンス強化にもつながります。奥尻町は32年前の北海道南西沖地震で甚大な被害を受け、島内の貯蔵タンク破損や、港に輸送船が着岸できない状況を経験しました。
こうした過去の経験からも、町内でエネルギーを自給できる体制を整えることは、非常時に町民の生活を守るうえでも大きな意義を持つ取り組みとなっています。
2-2. 地域資源を活かす「木質バイオマス事業」
木質バイオマスボイラー 画像提供:奥尻町
奥尻町では、森林の手入れが進まず、森林の荒廃が懸念されていました。そこで、木質バイオマス事業を展開することで、環境と経済の両課題解決を目指しています。
- 事業内容: 木材をコンパクトに製材しフェリー輸送コストを削減するとともに、製材過程で発生する端材を燃料とする木質バイオマスボイラーを導入。
- 導入実績: 現在、町内の2つの小学校と役場総合庁舎に導入し、暖房として利用。
- 成果: 再生可能エネルギーを島内で作り、島外に流出していた燃料代を島内で循環させることができています。今後は、公共施設を中心に導入の拡大を目指していく方針です。
3. 奥尻町の取り組み内容:離島の特性を活かしたRE導入と多分野連携
奥尻町では、自然環境への配慮や電力系統の安定性という離島特有の課題を抱えながらも、地熱や水力といった独自のエネルギー資源をいち早く活用してきました。さらに、交通、観光、福祉といった多分野との連携も進めています。
3-1. 事例①:地熱・小水力・バイオマスによる安定的な電力・熱供給
画像提供:奥尻町
奥尻町は、北海道本土とは独立した電力系統を持つ離島でありながら、安定的な電力供給源として再生可能エネルギーを導入しています。
| 発電種別 | 導入状況・実績 | 島の特性との関連 |
|---|---|---|
| 地熱発電 | 2017年にバイナリー方式(250kW)を採用した地熱発電所を設置。離島の地熱発電所としては全国で2例目、代替フロンの蒸気でタービンを回す方式としては初の事例。現在も稼働中。 | 火力に依存しない安定電源として活用。 |
| 小水力発電 | 1961年にホヤ石川発電所(170kW)を設置し、現在も稼働中。 | 豊富な水源を古くから活用。 |
| バイオマス(熱) | 町内の2つの小学校と役場総合庁舎に木質バイオマスボイラーを導入し、暖房として利用。 | 地域材の端材を再利用し、燃料費の島内循環に貢献。 |
3-2. 事例②:EV「グリスロ」が担う交通・観光・福祉分野の多角連携
グリスロ実証運行の様子 画像提供:奥尻町
町は、自動車の電動化促進と地域公共交通の利便性向上を目指し、超低速EVの「グリーンスローモビリティ(通称グリスロ)」の導入を進めています。
- 交通・観光: 時速20キロ未満で走行するため、ゆっくりと景色を楽しみながら安全に特定地域を周遊でき、島外からの観光客の足として期待されています。
- 福祉: 外出手段が限られた高齢者の通院やお買い物の足として、地域交通分野での活用も目指し、昨年度から実証運行を実施しています。
- 今後の計画: グリスロのほか、役場庁舎をはじめとする町内各地域の公共施設へのEV充電スタンド整備やEVデマンドバスの導入も目指しています。
3-3. 事例③:公共施設ZEB化推進と民間への支援環境整備
奥尻町では、建物分野の脱炭素化を率先して進めています。昨年建設された町役場総合庁舎(ZEB Ready)をはじめ、公共施設のZEB化を推進しており、民間施設・民間住宅のZEB/ZEH化に向けても、省エネ改修のメリット周知や支援環境の整備を進めていく方針です。
さらに、ブルーカーボンを活用した脱炭素施策にも積極的に取り組んでいます。奥尻町は今年6月、株式会社ENEOSと「ブルーカーボンを活用した脱炭素社会の実現」に向けた連携協定を締結しました。
町内では、地元の若手漁師が「ホソメコンブ」の養殖を通じてCO₂の吸収量を増加させ、その吸収量をクレジットとして販売する取り組みが行われています。今年1月にはブルーカーボンクレジットの認証を受け、既に販売も開始されています。今後もこの取り組みをさらに拡大していく予定です。
4. 住民・未来世代との協働:意識醸成と教育を通じた挑戦
画像提供:奥尻町
脱炭素社会の実現には、町民全体の理解と協力が不可欠です。奥尻町では、体験型のイベント開催や、学校との連携を通じて、住民の意識醸成と次世代への教育に力を入れています。
4-1. 体験型ワークショップ「おくしりゼロカーボン塾」の開催
ゼロカーボン推進の取り組みの周知や理解増進を図るため、体験型のワークショップを開催しています。
- エコクッキング教室: 省エネ・節電につながる料理を学ぶことで、日常生活における脱炭素を実践。イベントには町長も参加し、町民と共にエコな料理を学ぶ機会となった。
- ボードゲーム体験: 北海道庁が作成したゼロカーボンについて学べるボードゲーム「ゼロボン」の体験会を実施。
こうした体験を通じて、脱炭素を自分事として捉える機会を提供し、住民の主体的な行動を促しています。
4-2. 次世代に伝える:中学校・高校での実践的な環境教育
地熱発電所を見学する中学生 画像提供:奥尻町
島内唯一の中学校・高校と連携し、地域のエネルギー施設を教材とした実践的な環境教育を実施しています。
- 中学生への教育: 毎年、島内唯一の中学校「奥尻中学校」の地域見学実習として、島内の再生可能エネルギー発電施設である地熱バイナリー発電所見学を実施。
- 高校生への教育: 島内唯一の高校「奥尻高校」のコース別学習で、奥尻町のゼロカーボン推進の取り組みを学び、学生生活の中で実施できる脱炭素や環境負荷軽減につながる取り組みを学生たちに考えてもらうといった環境教育を北海道と連携して行っています。
5. まとめ
画像提供:奥尻町
奥尻町が推進するゼロカーボン戦略は、「離島」という地理的な課題を、「地域資源の徹底活用」という大きな可能性へと転換していく挑戦です。
地熱バイナリー発電や木質バイオマス事業によって町外へ流出していた燃料代を島内循環へと切り替えることで、地域経済の強化を図っています。また、EV「グリスロ」の導入では、交通・観光・福祉分野を横断した連携が進んでおり、島全体の利便性向上にもつながっています。
さらに、奥尻島沖合は風況が良く、風力発電の高いポテンシャルを持つ地域です。現在、浮体式洋上風力の導入に向けた検討も進んでおり、再生可能エネルギーの新たな柱として期待されています。
町では、こうした多様な資源と協働の力を結集し、豊かな自然と利便性が両立する「サスティナブル・アイランド奥尻」の実現を目指しています。
最後に、この取り組みを推進する奥尻町担当の方からの、地域住民・地元企業の皆様へのメッセージをお届けします。
奥尻の豊かな海や山の自然を子どもたちや未来の世代に受け継いでいくため、そして、地域課題を解決するためにゼロカーボン化を推進しています。そのためには町民の皆さま、事業者の皆さまの協力が不可欠です。自然豊かで美しい奥尻を共に守り伝えていきましょう。
監修

エコ発事務局 太陽光アドバイザー
曽山
『誠実、スピーディーな応対』をモットーに日々エコ発を運営しています。 お客様への応対だけでなく全国に数百ある提携業者様とのやり取りをはじめ、購入者様へのキャンペーン企画やウェブサイトの改善など、皆様のお役に立てるよう日々業務に取り組んでいます。 卒FIT後の太陽光発電の活用方法など、お困りごとがございましたら、お問い合わせにてお気軽にご相談下さい。
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