太陽光発電10kW以上は損?費用と20年間の売電収入を徹底シミュレーション
公開日:2013/08/28 | | カテゴリ:太陽光発電の基礎知識
「屋根が大きいから、たくさんパネルを載せてしっかり稼ぎたい」
そうお考えの方にとって、10kW以上の太陽光発電は魅力的な選択肢です。しかし、10kWの壁を越えると、単に容量が大きいだけでなく、制度上の扱いが「住宅用」から「産業用」へと大きく変わることをご存知でしょうか?
この違いを知らないまま進めると、「思ったより売電単価が低い」「固定資産税がかかるなんて知らなかった」といった後悔に繋がりかねません。
まずはじめに、10kW未満の「住宅用」と10kW以上の「産業用」の5つの決定的な違いを、以下の表で明確に理解しておきましょう。
項目 | 10kW未満(住宅用) | 10kW以上(産業用) | 補足 |
---|---|---|---|
分類 | 住宅用 | 産業用 | 住宅に設置しても産業用扱いになる |
売電期間(FIT) | 10年間 | 20年間 | 長期的な収入計画が立てやすい |
売電単価(2024年度) | 16円/kWh | 10円~12円/kWh | 容量が大きい分、単価は低めに設定 |
買取制度 | 余剰買取 | 余剰買取 | 2020年以降、全量買取は選択不可 |
固定資産税 | 対象外 | 課税対象 | 設置費用とは別に毎年コストが発生 |
このように、10kW以上の太陽光発電は、より事業的な側面が強くなります。売電期間が20年と長くなる大きなメリットがある一方で、売電単価が低くなり、固定資産税の負担が発生する点をしっかり押さえておくことが重要です。
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大容量だからこそ!10kW以上の太陽光発電を導入する3つのメリット
制度上の違いを理解した上で、10kW以上の大容量だからこそ得られる具体的なメリットを見ていきましょう。
メリット1:電気代の削減効果が非常に大きい
最大のメリットは、圧倒的な発電量による電気代削減効果です。発電量が多い分、日中の電力使用を太陽光でまかなえる量(自家消費量)が増えます。
昨今の電気料金高騰を考えると、電力会社から電気を買う量を減らせるインパクトは非常に大きいと言えるでしょう。特に、日中の在宅時間が長いご家庭や、電気自動車(EV)をお持ちのご家庭では、その恩恵を最大限に享受できます。
メリット2:20年間の長期的な売電収入が見込める
FIT(固定価格買取制度)の適用期間が20年間であることも、大きな魅力です。住宅用(10kW未満)の10年間と比較して、2倍の期間、国が定めた単価で安定した売電収入を得られます。
これは、長期的な視点での投資回収計画を立てやすいことを意味します。目先の収入額だけでなく、20年という長期スパンでトータルの収益性を考えることが大切です。
メリット3:停電時も安心!災害時の非常用電源として活躍
大容量のシステムは、災害による停電時にも心強い味方となります。一般的な住宅用システムよりも多くの電力を確保できるため、生活に必要な電力を広範囲にカバーできます。
ファクトデータによると、10kWのシステムは1日あたり平均約27kWhの発電が見込めます。これは、冷蔵庫やスマートフォンの充電はもちろん、テレビや照明など、複数の家電を同時に使用しても余裕のある電力です。蓄電池を組み合わせれば、夜間も安心して電気を使えます。
後悔する前に知るべき4つのデメリットと注意点
大きなメリットがある一方、10kW以上の太陽光発電には特有のデメリットや注意点が存在します。これらを事前に把握し、対策を考えることが成功の鍵です。
デメリット1:売電単価が住宅用より低く設定されている
最も注意すべき点は、売電単価です。ファクトデータに基づくと、2024年度のFIT売電単価は以下の通りです。
- 10kW未満(住宅用):16円/kWh
- 10kW以上(産業用):10円~12円/kWh
このように、1kWhあたりの単価は住宅用よりも低く設定されています。そのため、「たくさん売電できるから儲かるはず」と単純に考えるのは危険です。売電収入をシミュレーションする際は、必ず産業用の低い単価で計算する必要があります。
デメリット2:固定資産税の課税対象となる
10kW以上の太陽光発電設備は、住宅の屋根に設置した場合でも事業用資産と見なされ、固定資産税の課税対象となります。これは毎年発生するランニングコストであり、収支計画に必ず含めなければなりません。
税額は、設置費用や自治体の税率によって異なりますが、年間数万円程度の負担となるケースが一般的です。事前に設置業者や自治体に確認しておきましょう。
デメリット3:多くの自治体で補助金の対象外になる
太陽光発電の導入を後押しする補助金制度は、多くの自治体で実施されています。しかし、その多くは10kW未満の住宅用システムを対象としており、10kW以上の産業用は対象外となるケースが少なくありません。
初期費用を抑えるために補助金を期待している場合は、お住まいの自治体の制度を必ず確認してください。
デメリット4:「発電所」として扱われ、手続きや維持管理が重要になる
10kW以上の設備は法律上「小規模事業用電気工作物」となり、いわば個人の「発電所」として扱われます。これにより、電力会社との接続契約の手続きが複雑になったり、安全な運用を続けるための定期的なメンテナンスの重要性が増したりします。信頼できる施工業者に相談し、保守点検プランについても確認しておくことが不可欠です。
【費用と収入】10kW太陽光発電のリアルな収支シミュレーション
では、実際に10kWの太陽光発電を設置した場合、費用はいくらかかり、どれくらいの収入が見込めるのでしょうか。ファクトデータに基づき、リアルな収支をシミュレーションしてみましょう。
初期費用はいくら?目安は約236万円
経済産業省のデータによると、2024年における1kWあたりの設置費用相場は23.6万円です。
これに基づくと、10kWのシステムを導入する場合の初期費用は、単純計算で約236万円がひとつの目安となります。
10kW × 23.6万円/kW = 236万円
これには太陽光パネル本体だけでなく、パワーコンディショナ、架台、工事費、設計費などが含まれます。もちろん、選択するメーカーや工事内容によって費用は変動するため、複数の業者から見積もりを取ることが重要です。
年間の発電量と売電収入は?2つのモデルで試算
売電収入は、発電量、自家消費率、売電単価によって大きく変わります。ここではファクトデータにある2つのシミュレーションを見てみましょう。
【シミュレーションA】
- 年間発電量: 10,000kWh
- 売電割合: 68.8%(自家消費率31.2%)
- 売電単価: 12円/kWh(2024年度 産業用FIT価格)
- 年間の売電収入: 82,560円
- 計算式: 10,000kWh × 68.8% × 12円/kWh = 82,560円
【シミュレーションB】
- 年間発電量: 9,600kWh
- 売電単価: 16円/kWh(※住宅用の単価で仮定した場合の参考値)
- 年間の売電収入: 153,600円
重要なのは、現実的なシミュレーションAの数値です。 産業用の低い売電単価(12円)で計算すると、年間の売電収入は約8.2万円となります。ここに、自家消費による電気代削減額(年間約10万円以上)が加わることで、トータルの経済的メリットが生まれます。
費用回収にかかる期間(元が取れる年数)は?
初期費用236万円を、年間の経済メリット(売電収入+電気代削減額)で回収していくことになります。
- 年間の経済メリット ≈ 8.2万円(売電収入) + 10万円(電気代削減額) = 18.2万円
- 費用回収期間 ≈ 236万円 ÷ 18.2万円/年 ≈ 12.9年
このシミュレーションでは、約13年で初期費用を回収できる計算になります。FIT期間は20年あるため、残りの約7年間は純粋な利益を生み出す期間となります。
※これはあくまで一例です。実際には固定資産税やメンテナンス費用がかかるため、回収期間はもう少し長くなる可能性があります。
我が家は設置できる?10kW太陽光発電に必要な屋根の面積
10kWもの太陽光パネルを設置するには、相応のスペースが必要です。
一般的に、1kWのシステムを設置するのに10〜15㎡の面積が必要とされています。
つまり、10kWのシステムを設置するには、最低でも100㎡~150㎡の屋根面積が必要になります。
これは、一般的な建売住宅の延床面積に匹敵する広さです。かなり大きな屋根を持つ住宅や、カーポート、あるいは敷地内の土地を活用しなければ、10kW以上の設置は難しいのが現実です。
まずは専門業者に自宅の屋根を見てもらい、何kWまで搭載可能かを確認することから始めましょう。
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10kW太陽光発電の導入で失敗しないための3つのポイント
最後に、10kW以上の太陽光発電導入を成功させるために、必ず押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
1. 「自家消費」を軸に蓄電池の導入も検討する
売電単価が低下傾向にある現在、太陽光発電の経済性を最大化する鍵は「自家消費」です。発電した電気を売るよりも、電力会社から高い電気を買わずに自分で使う方がお得だからです。
特に10kW以上の大容量システムでは、日中に使いきれないほどの電力が生まれます。この余剰電力を蓄電池に貯めておけば、夜間や天候の悪い日にも活用でき、電気の自給自足率を飛躍的に高めることができます。
2. 発電量を最大化する設置プランを専門家と練る
同じ10kWのシステムでも、設置の仕方によって発電量は大きく変わります。発電量を最大化するためには、以下の要素が重要です。
- 方角: 真南向きが最も効率的
- 角度: 地域によって最適な設置角度がある(一般的に30度前後)
- 周辺環境: 影を作る建物や樹木がないか
- 設計・施工: 配線ロスを最小限に抑える専門的な技術
これらの要素を総合的に判断し、最適なプランを提案してくれる、経験豊富な専門業者を選ぶことが何よりも大切です。
3. 必ず複数の信頼できる業者から見積もりを取る
太陽光発電は、決して安い買い物ではありません。設置費用や提案内容は業者によって様々です。
必ず2〜3社以上の専門業者から見積もりを取り、以下の点を比較検討しましょう。
- 費用の総額と内訳
- 使用するパネルやパワコンのメーカー、性能
- 発電量のシミュレーションとその根拠
- 保証内容やアフターサポート体制
複数の提案を比較することで、ご自身の家に最適なプランと、信頼できるパートナーを見つけることができます。
まとめ:10kW以上は「長期視点の自家消費」を考える人におすすめ
この記事では、10kW以上の太陽光発電について、その特徴からメリット・デメリット、リアルな収支までを詳しく解説しました。
- 分類: 住宅用ではなく「産業用」扱いになる。
- メリット: 電気代削減効果が高く、20年間の長期売電が可能。
- デメリット: 初期費用が高額で、売電単価が低く、固定資産税がかかる。
- 費用目安: 約236万円(10kWの場合)。
- 回収期間: 約13年〜(売電収入と電気代削減額による)。
- 成功の鍵: 自家消費を最大化し、信頼できる業者を選ぶこと。
結論として、10kW以上の太陽光発電は、「広い屋根や土地があり、初期投資をかけてでも、20年という長期的な視点で電気の自給自足と安定収入を目指したい」という方に最適な選択肢と言えるでしょう。
もし少しでもご興味があれば、まずは専門の業者に相談し、ご自宅の屋根でどれくらいのメリットが見込めるのか、無料のシミュレーションを依頼してみてはいかがでしょうか。
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監修

エコ発事務局 太陽光アドバイザー
曽山
『誠実、スピーディーな応対』をモットーに日々エコ発を運営しています。 お客様への応対だけでなく全国に数百ある提携業者様とのやり取りをはじめ、購入者様へのキャンペーン企画やウェブサイトの改善など、皆様のお役に立てるよう日々業務に取り組んでいます。 卒FIT後の太陽光発電の活用方法など、お困りごとがございましたら、お問い合わせにてお気軽にご相談下さい。
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