太陽光発電の廃棄はどうなる?費用負担は?疑問を徹底解明!
公開日:2022/06/06 | 最終更新日:2022/10/30 | カテゴリ:太陽光発電の基礎知識

今回は、自然エネルギーを利用する太陽光発電システムの、廃棄全般に関する内容をお伝えしていきます。
自然にやさしいとされる太陽光発電ですが、廃棄までクリーンに行われなければ真の再生可能エネルギーとは言えませんね。
モジュール(太陽光パネル)のリサイクルってできるの?
発電ができなくなったりした後は、ゴミとして有害物質とかが出ないの?
このような心配や懸念される方もいますが、そんな疑問を解消できるような内容になっています。
まずは、今回の記事のまとめポイントを見ていきましょう。
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目次
太陽光モジュールのリサイクル方法
まずは、太陽光モジュールのリサイクル方法に関してみていきましょう。
リサイクルの考え方
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(出典:環境省「使用済太陽光パネルのリユース、リサイクルについて」)
平成12年に制定された「循環型社会形成推進基本法」という法律によって、廃棄物などの発生抑制やリサイクルが促進されることになっています。
もっとも、法律ではなく持続可能な社会の実現に向けては、リサイクル・リユースという考え方は、もはや世界スタンダードとなっています。
ただ、太陽光発電は再生可能エネルギーの代表格で出荷されている数量も膨大であることや、一般には馴染みの少ない素材であることから有害なのでは?と思う方も少なくありません。
実は、太陽光発電には鉛などの物質が確かに含まれているため、適正な処理が必要になってきますが、結論から申し上げると適正に処理されれば、一般の産業廃棄物と同じように有害物資が基準値以上に流出することはありません。
実際の太陽光モジュールのリサイクル方法
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(出典:環境省「使用済太陽光パネルのリユース、リサイクルについて」)
今度は、より具体的なリサイクル方法について解説していきます。
まず太陽光モジュールは、大きく分けて4つの部品から構成されています。
①フレーム:モジュールの四方の枠です。一般的にこの枠はアルミ合金製が多いです。
②ネジ:フレームを組付ける際に必要なネジで、一般的にはステンレス製です。
③ケーブル:発電した電気を供給するための配線で、コネクターが付いています。
④ラミネート部:太陽光モジュールの発電するメインの部分
上記の4つから主に構成されていますが、①・②・③は一般的な金属片として処理が容易ですが、問題はラミネート部です。
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(出典: 株式会社エヌ・ピー・シー「太陽光パネルのリサイクルサービス(中間処理)」)
特にモジュールの表面のガラス部は、ガラスとして再処理可能ですが、セルなどを剥がす必要があり、上図のように専門の業者による機械で処理を行います。
このように適切な業者で処分を行えば、有害物質が自然界へ流出することはありません。
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(出典:環境省「使用済太陽光パネルのリユース、リサイクルについて」)
上記以外の方法でも様々なリサイクル技術も確立されてきており、今後廃棄に関する需要も少しずつ伸びていくことが予測されているため、成長が期待される技術です。
メーカー側でも基準値以下の含有率で設計
メーカー側でも、有害物質を基準値以上に使用しないような工夫がなされています。
一般社団法人太陽光発電協会が定める「使用済太陽電池モジュールの適正処理に資する情報提供のガイドライン」に基づき、各メーカーは化学物質の含有状況を報告しています。
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(出典:シャープ株式会社「使用済太陽電池モジュールの適正処理に資する情報提供について」)
上記はシャープの例ですが、鉛を含む対象物質において基準値以下の含有率で製品を出荷していることを公表しています。
他にも主要なメーカーは全て報告されており、実際にはJPEA(太陽光発電協会)のホームページ「情報提供ガイドライン賛同者一覧表」で確認が可能です。
太陽光発電・廃棄費用の積立制度がスタート(10kW以上)
一方、このようなメーカー側の設計・リサイクル方法はあるものの、適正な処理がされているか?は別問題です。
2022年7月からは、10kW以上の太陽光発電事業者に対して、積立制度がスタートしていきますが、廃棄費用に関する全体の概要を確認していきましょう。
太陽光発電の売電金額には廃棄費用を見込んでいる
太陽光発電を設置すると、余剰発電でも全量発電でも売電した分は、契約単価に応じて電力会社から支払われます。
そもそもの話しではありますが、この時に支払われる売電金額には、実は廃棄に関するコストも載せて支払われています。
これは、FIT制度の創設時に既にこの考え方で運用されており、資源エネルギー庁としては基本的に売電で返している金額の中で、廃棄まで事業者側で適正に行ってほしい、という考えのもと制度がスタートしています。
しかし、実際にはその性善説が成り立つケースは少なく、しっかり積立てを行っている事業者は少なかったことが判明しました。
そのため、政府としては制度として半強制的に積み立てる形をとり、適正な処理を推進していきます。
2022年7月から廃棄費用の積立が義務化(10kW以上)
実は2017年頃から、この廃棄に関するガイドラインの策定が進められていました。
2018年には、廃棄費用に関する報告の義務化をスタートさせましたが、この時点で多くの事業者が廃棄費用の積立を行っていないことが発覚し、急いで政府は制度改革に乗り出しました。
2020年にようやく、廃棄費用を確実に積み立てる「再エネ特措法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)」の改正がされ、2022年7月1日から、太陽光発電に関する廃棄費用の積立制度が始まります。
適用されるのは、10kW以上の発電事業者のみ(全量・余剰共に)ではありますが、1件の規模が大きい事業者から行うことで影響の効果は大きいです。
実際の積立方法は、原則的に売電の費用から差し引かれる形で積立がなされていきます。
この積立方式を「外部積立」といい、原則的にはこの方法が取られ、具体的にはFIT買取期間20年のうちの後半10年間で、このコストを積み立てます。
廃棄を適切に行えば積立金で補填される
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(出典:経済産業省資源エネルギー庁「産業等費用積立ガイドライン」)
10kW以上の発電事業者が実際に積立する費用は、電力広域的運営推進機関という公的機関に預けられます。
この積立金は、廃棄処理を行った際に返却されるという仕組みになっています。
FIT終了後に、架台なども含めてシステム全体を廃棄する場合、推進機関に積み立てられた解体などの積立金が戻ってきます。
また、発電規模を縮小したりする場合も、割合に応じて廃棄費用に対して積立金が戻るような仕組みになっており、ケースごとで対応は可能です。
ただし、積立金に対して廃棄費用の方が高い場合は、持ち出しの費用が発生しますが、これは売電のコストから補填する、という考え方になっています。
課題は廃棄コストと気になる相場
2の章で解説した通り、廃棄に関するコストは半強制的に積立が行われるため、今後は廃棄に関する仕組みや制度、それに伴う業者の拡充も見込まれます。
ただ、現時点では廃棄にかかるコストが、安価に済まないことが課題でもあります。
積立制度が進んでくると、発電事業者側としては積み立てた金額を使わないともったいないため、適切な処置がすすみやすいですが、一方で廃棄にかかるコストが高いと躊躇する事業者が多くなる傾向と予測されています。
今後はリサイクル方法も含めて、技術革新がさらにすすんでいくことに期待したいところです。
産業用太陽光の廃棄コスト相場はkWあたり2万円前後~
それでは気になる廃棄コストの相場ですが、50kW以上の産業用太陽光(野立て)での廃棄コストの相場はkWあたり約2万円~と言われています。
50kWであれば、約100万円~となっており決して安くはないため、このような費用がかかることを念頭に積立をあらかじめ行っておくことが重要です。
住宅用太陽光の廃棄コスト相場は約40万円~
一般的な5kW前後の住宅用太陽光では、まず「取り外しにかかるコスト」として約30万円程度と想定しておきましょう。
これは取り外しにかかる足場代や作業員の手間賃になりますので、ここに実際に廃棄される費用は含まれていません。
運搬して廃棄するためのコストは、例えば5kW(モジュール25枚)の場合で約5万円程度~が相場でしょう。
モジュール1枚あたり約1,200円が処分コスト相場のため、1,200円 × 25枚 = 3万円です。
運搬費用を数万円みたとしても処分コストとして約5~6万円、諸経費なども合算して諸々で約40万円と考えて、大きな相違はないでしょう。
ただし、住宅用の場合は「架台」が屋根に残るため、架台を無くしてスッキリさせることを考えると屋根材の部分補修や全面補修が必要になってきます。
補修の相場は数十万円~となりますが、架台の種類によっては外観さえ気にしなければ残しておいて問題ない種類の架台もありますので、コストと屋根の状態に応じて検討しましょう。
取り外したパネルはリユース(売却)という選択肢も
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(出典:経済産業省資源エネルギー庁「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けた ガイドライン」)
廃棄することを前提にお伝えしてきましたが、太陽光モジュールの発電効果は半永久的のため、外傷などがない状態のいいモジュールであればリユースとして売却するという選択肢もあります。
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(出典:経済産業省資源エネルギー庁「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けた ガイドライン」)
環境省も、廃棄だけでなくリサイクル・リユースをすすめており、買取をしてくれる業者が存在しており、そういった業者に相談することも良いのではないでしょうか。
故障したパワコンなどでも部品取りとして、引き取ってくれることも考えられますので、廃棄だけでなく売却という選択肢も検討してみると良いでしょう。
持続可能な社会のためには適正なメンテナンス+廃棄処理
ここまで廃棄する前提で、処理方法や制度などを紹介してきました。
しかし、太陽光モジュールの寿命は適切にメンテナンスを行えば、半永久的に発電し続けるものです。
そのため、購入時点から劣化は発生しつつも、適切なメンテナンスを施しながら長く使うことが最も環境にやさしいのではないでしょうか。
一部の悪徳業者のずさんな管理によって、風評被害の絶たない太陽光発電ではありますが、商品や技術自体は世界的に見ても、最も安価で安全な発電システムです。
この発電システムを使える限りは使うこと、そしてやむを得ない事情で廃棄する場合も、適切な廃棄を行うことで持続可能な社会への貢献になるのではないでしょうか。
使用済みパネルのリユース事例
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(出典:環境省「使用済太陽光パネルのリユース、リサイクルについて」)
廃棄するだけが処理方法ではありません。
使用済みパネルも大きな損傷がなければ、前述の通り発電できるので、リユースという選択肢もあります。
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(出典:環境省「使用済太陽光パネルのリユース、リサイクルについて」)
上記の事例は環境省の資料からの抜粋ですが、廃棄せずにリユースを上手く活用した事例です。
方法や選択肢次第では、SDGsにつながるエコな取り組みとしても注目していきたい分野でもあります。
まとめ
まとめとしては、太陽光発電の廃棄に関する不安事項・懸念は、新しく始まった積立制度で順次解消されていくものと想定されます。
太陽光発電は製造から廃棄まで含めても、排出するCO2が非常に少ない発電システムです。
2022年時点では、まだ廃棄コストが高額な傾向にありますが、多くの太陽光モジュールの寿命による廃棄問題が起こると予想されている2040年頃には、積立制度と廃棄に関する技術が安価で実現できていることを願うばかりです。(2022年時点でも、廃棄に関する技術はあります)
監修

エコ発事務局 太陽光アドバイザー
曽山
『誠実、スピーディーな応対』をモットーに日々エコ発を運営しています。 お客様への応対だけでなく全国に数百ある提携業者様とのやり取りをはじめ、購入者様へのキャンペーン企画やウェブサイトの改善など、皆様のお役に立てるよう日々業務に取り組んでいます。 卒FIT後の太陽光発電の活用方法など、お困りごとがございましたら、お問い合わせにてお気軽にご相談下さい。
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