客観的な視点でみるエコキュートのメリットとデメリット!
公開日:2022/03/07 | | カテゴリ:エコキュートに関する記事一覧
今回は、エコキュートに関するメリットとデメリットを客観的な視点から解説していきます。
巷にあふれている内容ではありますが、多くが「エコキュート寄り」「ガス寄り」の立場の人が書いていることが多く、事実と異なっていることもしばしば見受けられます。
当記事では、メーカーなどが公表しているデータも冷静に分析しながら、客観データを用いつつ検証をしていきたいと思います。
それでは、まずは今回の内容のポイントをお伝えします。
- エコキュートのメリットは
「ランニングコストの安さ」
「災害時にお湯が使える」
「太陽光発電との連携がよい」 - エコキュートのデメリットは
「イニシャルコストが高く、場所を取る」
「スタンダード機種は、シャワー水圧が弱い」
「大量にお湯を使うと湯切れのリスクがある」 - エコキュートに向いている方は、場所が確保できてランニングコストを含めた、トータル費用を抑えたい方
エコキュートのメリットとデメリット
まずは、エコキュートに関する内容の紹介をしていきます。
エコキュートのメリット
エコキュートのメリットは、以下のとおりです。
- ランニングコストが安い(月額で約2,000円~2,500円)
- 災害時に貯湯タンクにあるお湯を利用できる(飲用不可)
- 太陽光発電との連携ができ、余剰電力の活用先として有用
■ランニングコストが安い(月額で約2,000円~2,500円)
(出典:パナソニック株式会社「低ランニングコスト」)
まず最大のメリットである、ランニングコストについてです。
エコキュートは基本的に、深夜電力を利用してヒートポンプで熱を作り出し、その熱を使って給水からお湯を作り出します。
電力会社にもよって若干の差はありますが、深夜電力は日中の電力単価と比較して約半分~3分の1程度です。
このリーズナブルな深夜電力を利用することでランニングコストがガス給湯器などに比べて安くなります。
各社で実際のランニングコストを提示していますが、一例をあげるとパナソニックが製造しているエコキュートで各電力会社でのランニングコストを提示しています。(※例:パナソニック)
パナソニックのデータを引用すると、最も安いコストになっている沖縄エリアの900円 / 月額から、最も高コストの北海道エリアの2,700円/ 月額まで差があります。
本州の一般的な地域では、2,000円/ 月額前後となっています。
(出典:一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター「ヒートポンプとは」)
この差は、ヒートポンプは空気の熱を回収する仕組みになっているため、暖かい沖縄では空気中から熱を回収しやすく、冬季に厳しい寒さになる北海道ではその分、熱が回収しにくくエネルギーが必要ということが理由です。
本州での金額差は、各電力会社の深夜電力の単価差によるものが大きいですが、それでも数百円程度の差となっています。
ただ、このシミュレーションの前提条件を冷静に見ると、パナソニックのエコキュートシリーズの中でも、保温効率の高い高級機種が使われているため、普及価格帯のエコキュートはここから何割かランニングコストはかかると想定されます。
それでも本州エリアの現実的なコストとしては、2,500円/ 月額前後がリアルなランニングコストでしょう。
■災害時に貯湯タンクにあるお湯を利用できる(飲用不可)
(出典:三菱電機株式会社「ヒートポンプ給湯器取扱説明書」)
そして2点目の災害時におけるお湯の利用についてです。
エコキュートは高温のお湯が貯まっているため、災害時(停電時や断水時)において、たまっているお湯を使うことができます。
そして実は、ほぼ全てのメーカーのエコキュートで停電時に「お湯が蛇口から使えます」。
断水して給水に圧が掛かっていない場合は、タンクの下部から直接お湯をバケツに出す、という荒業になってきますが、水道が断水さえしていなければ、お湯の蛇口からお湯が出てくる機種が多いです。
ただし、注意点としては貯湯タンク内の高温のお湯(60℃~80℃)のお湯がそのまま出てくる機種が多いので、火傷などには十分な注意が必要ですが、このお湯を利用して停電していてもお風呂に浸かったりすること自体は可能です。
反対にガスは災害に強いと思われがちですが、ガス給湯器も電気でシステムを動かしているため、停電時においては使用できません(停電対応キットに対応している機種であれば運転可能)
そのため、「オール電化は災害に弱い」というのは実は嘘で、エコキュートでも停電だけであればお風呂を利用できます。(貯湯タンクを使い切ったらダメですが)
■太陽光発電との連携ができ、余剰電力の活用先として有用
(出典:パナソニック株式会社「エコキュート:新商品のご紹介」)
そして3点目、太陽光発電との連携メリットです。
昨今は電力の値上がりが続いており、今後も上昇傾向です。
エコキュートが利用する深夜電力も漏れずに値上がりが何回かあり、昼間の電力単価に比べて相対的に安いとは言え、10年以上前から比べると約1.5倍程度に値上がりもしています。
一方で、太陽光発電の売電価格の下落もあり、余剰電力の自家消費による自給自足が、生活のランニングコストを減らす最も最善の策です。
そのため、この余剰電力を売電せずに、エコキュートでお湯を沸かず電力に活用する動きが出てきており、エコキュートの製造メーカー各社も、余剰電力で日中に沸かせるような設定・機能が出てきています。
このようにオール電化商材を複合的に使うことで、相乗効果が出てきます。
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エコキュートのデメリット
つづいて、エコキュートのデメリットについてです。
- イニシャルコストが高く、ガス給湯器に比べて場所を取る
- シャワー水圧が弱く強い水圧でシャワーを浴びたい方には不向き(日立・水道直圧方式を除く)
- 大量にお湯を使うと湯切れのリスクがある
イニシャルコストと置き場所
デメリットの1つ目である、イニシャルコストと場所の問題です。
ガス給湯器の一般的な設置相場(入替)としては12~13万円(材料・工事代)が最下限コストです。
一方、エコキュートは商品代・工事代での合算相場が約40万円~となっておりガス給湯器に比べて確実に高いです。
内訳としては、エコキュートは商品で約20万円~。
工事費用も最低でも2人必要になってきたり、タンクを固定するための基礎をうつ作業までは考え、工事費用だけで約15万円~20万円が相場となってくるため、おおむね諸経費込みで約40万円~が相場と言えます。
(ガス給湯器→エコキュートへの入替)
そして設置のサイズ(必要面積)としてもエコキュートは不利です。
(出典:中国電力株式会社「エコキュートの設置工事」)
ガス給湯器は壁掛け式のものが多く、一般的な4人家族向けで使われるガス給湯器である24号タイプの給湯器であれば、幅は35cm~50cm、高さは60cm~75cm程度です。
例)幅470×高さ600×奥行240mm(リンナイ・RUF-A2405AW)
それに対して、エコキュートは貯湯タンクとヒートポンプがセットで設置が必要です。
◆離隔距離などもふまえて必要な据付必要面積
横並び設置で必要な寸法(目安):奥行900mm × 幅1800~2000mm
※貯湯タンク単独:幅 約900mm × 奥行 約900mm(設置目安寸法)
※ヒートポンプ単独:幅 約900mm × 奥行 約450mm(設置目安寸法)
設置に関しては、必ずしも横並びする必要はありませんが、配管が遠いと熱が冷めるデメリットが出てきたり、風がタンクに当たらないようにする、高低差が規定以上あると設置負荷といったルールがあります。
(出典:中国電力株式会社「エコキュートのラインアップ・選び方」)
都市部向けの薄型タイプも出ていますが、タンクの奥行は2~3割薄く(450mm前後)なっていますが、その分幅は広く800mm前後です。
※角型に比べて保温効率が低い+コストが高いので、設置場所があれば角型がオススメ
水圧が弱い問題
(出典:ダイキン工業株式会社「エコキュート:機能」)
エコキュートは水道圧に比べると弱く、シャワーを思いっきり浴びたい方には水圧が弱いです。
水圧が弱くなる理由としては、貯湯タンクで一回お湯を受けるために減圧弁を使っているため、どうしても強力な水道圧が弱まります。
一般的な水道圧は地域などにもよりますが、おおよそ500kPa(キロパスカル)に対して、エコキュートの標準的な機種は170~180kPAとなっています。
そのためシャワーで感じる水圧に差があり、強いシャワーが好きな方にとっては物足りなさを感じる方も多いはずです。
洗面所やキッチン水栓からの吐水、お湯張りでは問題はありませんが、水圧での懸念点はシャワーのみとなります。
シャワーを高圧にできるシャワーに変更する、沸かし温度を上げる、といった対策はありますが、いずれにしてもガス給湯器の水圧から比べると物足りないでしょう。
高水圧にしたい方は、各社から「高圧パワフルタイプ」というシリーズが出ています。
高圧パワフルタイプの水圧としては300kPA前後あり、そこまで不満感は出ないと思われます。
(出典:株式会社日立製作所「ナイアガラ出湯」)
そして、それでも物足りないかも?という方は「日立・水道直圧タイプ」がオススメです。
日立の水道直圧タイプは、一般的なエコキュートとは構造が異なり、貯めたお湯を直接使うわけではなく、「熱交換に使う」ことで水道と同じ水圧を実現。
言い換えれば、ガス給湯器と同じような構造でお湯を作っています。
ガス給湯器は水道管の水を、直接バーナーで温めてお湯を作り出しているように、日立の水道直圧タイプは、お湯の熱を水道管に伝達する構造になっており、水道管の水圧のままお湯として利用できるわけです。
そのため、水圧だけが懸念事項!という方は、日立の水道直圧タイプのエコキュートを選ぶと良いでしょう。
湯切れのリスク
(出典:株式会社日立製作所「エコキュートカタログ」)
3つ目のデメリットである「湯切れ」です。
エコキュートはタンクにお湯を貯めていることから、単純にそのタンク内のお湯を使い切ると、お湯を沸かすのに3~4時間かかります(※シャワー1人分ぐらいであれば約1時間あれば十分)
ただ、結論から申し上げると「過度な心配は不要」です。
過度な心配をする必要がない理由は、以下の3つ。
- 370Lでも実質、約650Lのお湯が作れる(不利な冬季想定でも)
- いつもどおりの生活の中で湯切れはしない(エコキュートが普段の使用量を計算)
- 事前にお湯をたくさん作るモードや、手動でお湯を作る「沸き増し」機能がある。
(完全な湯切れ→シャワーを1人分、問題なく使えるまで、約1時間)
まず、エコキュートでよくある誤解、「使える湯量=370L(460L)」という誤解です。
そのお湯は、貯湯タンクと呼ばれるタンクに深夜のうちに貯められます。
貯められる量としては、基本的には370Lもしくは460Lというのが主流のタンクサイズです。
貯湯タンク内のお湯の温度は約60℃~80℃となっており、その高温のお湯を水と混ぜて40℃前後のお湯として宅内で使います。
そのため、370Lの60℃のお湯があるときに、水を混ぜて使えばおおよそ40℃程度で使えるお湯としては倍以上の湯量が使えます。
実際に使える湯量としては、「混ぜる水の温度」「沸かしたお湯の温度と量」によって左右されますので、季節・地域によっても使える湯量が実は異なってきます。
単純には、混ぜる水側の温度が低い冬季は使える湯量が少なくなり、元々の水温が高い夏季については使えるお湯の量が増えます。
ダイキンの試算(冬季を想定 / 給水温度9℃、貯湯温度80℃の場合)
- 370リットルタイプの場合、約650リットル
- 460リットルタイプの場合、約850リットル
もっとも、このあたりの調整はエコキュート側が必要湯量を計算して、どの季節でもその家庭が使う湯量を確保するような運転になっているので、湯切れの心配は必要以上にはいりません。
現在の各社のエコキュートの基本的な動き方としては、毎日使う湯量をみて最低限の湯沸かし運転をする機種がほとんどとなっています(モードで選択可能)
普段の生活でギリギリなことが多い場合は、お湯をたくさん作るモードなどの設定があり、各家庭の使い方に応じて設定可能です。
また、エコキュートは深夜しかお湯を作れない、というわけではなく手動でお湯を作る「沸き増し運転」がありますので、足りなくなりそうな場合は、お湯を手動で作っておくことは可能です。
まとめ
今回はエコキュートについて、メリットとデメリットを分析してきました。
もう一度、冒頭で紹介したまとめの振り返りをご覧ください。
- エコキュートのメリットは
「ランニングコストの安さ」
「災害時にお湯が使える」
「太陽光発電との連携がよい」 - エコキュートのデメリットは
「イニシャルコストが高く、場所を取る」
「スタンダード機種は、シャワー水圧が弱い」
「大量にお湯を使うと湯切れのリスクがある」 - エコキュートに向いている方は、場所が確保できてランニングコストを含めた、トータル費用を抑えたい方
このように、エコキュートに向いている方は、何と言ってもランニングコストをまで含めたトータルコストを安く抑えたい方向けと言えます。
太陽光発電を設置される方も、余剰電力をうまく活用できるメリットもあり、オール電化で運用する方にはぴったりな給湯器です。
一方、デメリットを考慮してエコキュートに向いていない方は、思いっきりシャワーを浴びたい方、そしてお湯の消費量が極端に多い方はエコキュートに向いていないと言えます。
ご家庭の状況などに応じて、エコキュートやガス給湯器か、どちらが向いているか?今回の記事を参考にしてみてください。
監修
エコ発事務局 太陽光アドバイザー
曽山
『誠実、スピーディーな応対』をモットーに日々エコ発を運営しています。 お客様への応対だけでなく全国に数百ある提携業者様とのやり取りをはじめ、購入者様へのキャンペーン企画やウェブサイトの改善など、皆様のお役に立てるよう日々業務に取り組んでいます。 卒FIT後の太陽光発電の活用方法など、お困りごとがございましたら、お問い合わせにてお気軽にご相談下さい。
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