災害対策には必須!EV(電気自動車)をV2Hで利用するメリットは?
公開日:2021/11/30 | 最終更新日:2023/02/09 | カテゴリ:EVに関する記事一覧

今回の記事では、災害時(停電時)において電気自動車(EV)、そしてV2H(Vehicle to Home)がどう役立つか?にフォーカスしていきます。
電気だけでは不安…、と思う方も多いと思いますが、実は電気自動車(EV)の方が災害時においては便利です。
「走る蓄電池」であるEVを最大限活用できるV2Hシステムや、補助的な蓄電池まで備えていれば、災害(停電)対策は万全と言えるでしょう。
その理由、そして導入に際しての注意点やデメリットまで見ていきましょう。
- 災害時において、電気自動車(EV)はガソリン車に比べて、燃料(電気)確保がしやすい!
- V2Hシステムがあれば、EVから最大2~4日分の電気が確保できる(普段と同じ電力使用量で)!
- 蓄電容量比で考えると、住宅用蓄電池に比べてEVはリーズナブル!
- デメリットは、車両の電池劣化を早めることと、災害時(特に急な大地震)に残量が残っているとは限らないこと
目次
災害時は電気の復旧が一番早い
阪神淡路大震災や東日本大震災のような、大規模な停電が何日も続く、という状況においてライフラインで最も早く回復するのが「電気」です。
ガスや水道に比べて、電線をつなぎなおす、電柱を立て直すという作業は、地中に埋まっている管の補修に比べて、作業としても対応しやすく復旧が早くなります。
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(出典: 総務省「東日本大震災と熊本地震の特徴の比較」)
上記のデータは総務省のデータで、過去のデータでも立証されています。
電気は約1週間でほぼ復旧が完了するのに対して、ガスは約2週間~数か月、水道も数か月を要するとあります。
東日本大震災や、阪神淡路大震災の時は、家が倒壊などで使えなくなり、車中泊をしている方も少なくありませんでした。
車中泊をする場合、ガソリン車の方が有利だよね?と思う方も多いと思いますが、そうとは限りません。
当然、電池・ガソリンの残量によりますが、電気は停電していれば充電ができません。
ガソリンも、ガソリンスタンド自体が停電していると、タンクからガソリンを汲み上げるための機構が、通常通りで運用することができず、普段通りに給油することはできません。
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(出典: 朝日新聞「被災地のガソリン不足深刻 東北・関東で販売制限」)
また、災害時によく見られる光景ですが、ガソリンスタンドに長蛇の列(場合によっては何キロにもわたって)ができます。
営業できるガソリンスタンドも限られる上に、地域の人の大半がガソリン車、そして車中泊をしないといけない状況下では、このような状態に陥ります。
そして、やっと給油できると思ったら給油量の制限があります。
地域全体が停電している災害直後の状況では、EVでもガソリン車でも、余裕を持って車中泊することは難しいといえます。(特に冬季で暖房が必要な場合)
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(出典: 日産自動車株式会社「リーフ[LEAF]電気自動車(EV)|蓄電池として何日間?電気自動車を蓄電池として利用するメリット」)
そのため普及が早い電気であれば、むしろ電気自動車は有利と言えるでしょう。
充電できる設備と電気があれば車中で過ごすこともでき、積雪による一酸化炭素中毒の心配もいりません。
自宅が倒壊などしていても、市役所やディーラーなどの公共の充電施設が稼働していれば、そこで充電することも可能です。
このように電気は復旧も早いことはデータからもわかっており、その電気を最大限利用できる電気自動車は、場合によってはむしろ災害に強いかも知れません。
V2Hシステムのメリット
つづいて、V2Hシステム全般的に言えるメリットについてみていきましょう。
まず、V2Hシステムとは、電気自動車(EV)に貯蔵されている電気を、住宅の電気として使えるようにするシステムです。
災害発生時に、家が倒壊したりしていないことと、車にある程度充電されていることが前提ですが、V2Hシステムは心強い存在になります。
車種や充電量の条件が良ければ、数日間の普段と同様の電力量を確保することができます。
また、住宅用蓄電池より容量の割には安価である点も見逃せません。
日産の実験では4日分の電気をV2Hシステムから供給
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(出典: 日産自動車株式会社「リーフ[LEAF]電気自動車(EV)|蓄電池として何日間?電気自動車を蓄電池として利用するメリット」)
日産のホームページでは、
「災害によって、電力/ガス/水道/燃料などのライフラインが寸断された際、電気自動車は移動手段としてだけでなく、ご家庭や避難所への電源供給にも使うことができます。40kWh/62kWhのバッテリーを備えた日産リーフ(ZE1型)は、一般家庭の約2〜4日分の電力をまかなうことができます」と記載があります。
一般家庭(ガス併用住宅)では、1日に使う電力量は約15kWhと言われています。
これは、電力を大幅に消費するエアコンなどを使用している前提の平均値ですが、この平均値を考えても2~4日分の電気供給ができる、という話は現実に即した結果になっています。
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(出典: 日産自動車株式会社「リーフ[LEAF]電気自動車(EV)|蓄電池として何日間?電気自動車を蓄電池として利用するメリット」)
そして車種によって、V2Hシステムに対応している・対応していない、がありますので、V2Hを考えている方は車側でも対応している商品を選びましょう。
※対応車種:日産リーフ・日産i-MiEV・三菱アウトランダーなど
※V2H非対応:日本車以外のEV(テスラ・フォルクスワーゲン・ジャガーなど)
2021年時点では、現実的にV2Hシステムとして機能する車種は日産のリーフのみです。
住宅用蓄電池よりリーフは割安
2021年時点で新車販売されている日産リーフの車種は、2タイプあり「40kWhタイプ」と「62kWhタイプ」です。
40kWhタイプは税込3,326,400円~、60kWhタイプは税込4,417,600円~、となっています。(21年11月時点)
住宅用の蓄電池が10kWhでおおよそ200万円程度であることを考えると、40kWhで330万円は破格とも言えます。
もちろん、リーフだけではV2Hはできませんので、V2Hシステムを設置する商品代・工事代も含んで考えないといけませんが、それを考慮しても安い可能性が高いです。
ただ、中古のリーフは「どういった使われ方をしたか不明」「蓄電池としては駐車場1台分占拠する」という点を考慮しましょう。
一般的に自動車としてのみ利用されていれば、劣化も想定内かと思いますが、前オーナーがV2Hを日常的に使用していた車両であれば、電池劣化も走行距離の割に劣化している可能性もあります。
リーフでは「セグ欠け」と呼ばれる、劣化を示す指標が表示されるため、中古車の場合はこのセグ欠けを確認して購入しましょう。
また、蓄電池として購入するには駐車場1台分を占拠することや、自動車として使うこともある場合は、保険代や自動車税などがかかってきます。
停電時にV2Hでどれくらいの電気がまかなえる?
2の章では、電池残量が多ければ2~最大4日の電力を確保できる、と紹介をしました。V2Hを使うことで、停電時にどんな形で電気が使えるのか?をみていきましょう。
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(出典: ニチコン株式会社「EVパワー・ステーション 」)
こちらはニチコンの「EVパワー・ステーション」の例です。
停電時において、EVからの出力で3kVA(自立出力の最大出力)になっており、おおむね一般的な家電機器を動かすには十分と言えるでしょう。
参考事例ですが、TV・照明・スマートフォン充電・ルーター・冷蔵庫・エアコンを同時に稼働できる程度の電力供給ができます。
おおむねリビングで家族が集まって過ごす分には十分な電力量です。
上記の例は同時使用による場合ですが、3kVAを超える場合はシステムダウンを起こすため、余裕をもった電気の使い方を心掛けましょう。
アドバイスとしては、「熱に変換する家電機器は消費電力が大きい」というポイントに気を付けた方が良いです。(IHは中火~強火で使うと約2000W以上、ドライヤーは約1200W消費するためシステムダウンに繋がりやすい)
全負荷型タイプもあり
停電時において、住宅用の定置型蓄電池でもV2Hでも、「全負荷型」と「特定負荷型」があります。
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(出典: ニチコン株式会社「カタログ」)
「全負荷型」とは、停電が起きてもV2Hからの出力で、家じゅうでの電気を利用できるタイプです。(分電盤をそのままバックアップ)
停電時も、各部屋で電気をいつも通り使えて利便性が高い反面、電気を使いすぎやすくなるというデメリットがあります。
そして「特定負荷型」は、特定の回路(数か所の回路)のみをバックアップするタイプです。
電気を供給できる回路が限られていることはデメリットである反面、停電時において電気の無駄遣いを抑制できます。
V2Hシステムにおいても、全負荷タイプと特定負荷タイプの2種類があります。
予算や停電時に動かしたい家電機器や範囲をかんがえて、設置の検討をしましょう。
V2Hシステムごとの停電時の出力(自立運転)まとめ
ニチコン・EVパワー・ステーション
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(出典: ニチコン株式会社「カタログ」)
スタンダードモデル(VCG-663CN3・VCG-663CN7):特定負荷・100V出力・最大3kW
※停電時は車のシガーソケットから、V2H本体の電源を取る必要あり
プレミアムモデル(VCG-666CN7):全負荷・200V出力・最大6kW
※停電時は車のシガーソケットから、V2H本体の電源を取る必要あり
プレミアムPlus(VCG-666CN7K-1シリーズ):全負荷・200V出力・最大6kW
※停電時操作がワンタッチ操作
※UPS(無停電電源装置)機能あり。
※UPS機能=停電になった時に家電製品がシャットダウンしないように電源を維持できる機能
ニチコン・トライブリッドシステム
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(出典: ニチコン株式会社「トライブリッド蓄電システム」)
トライブリッド用 V2Hスタンド(ESS-V1):特定負荷 / 全負荷・100V出力・最大3kW
デンソー・V2H充放電器
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(出典: 株式会社デンソー「V2H-充放電器」)
DNEVC-D6075:全負荷・200V出力・6kW未満
※車種や車両状況によって最大出力は変動します
※ニチコン・プレミアムモデルと同仕様
東光高岳・Smaneco V2H
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(出典: 株式会社東光高岳「EV用パワーコンディショナ(V2H)」)
CFD1-B-V2H1:全負荷・200V・連続3kW以下
※最大出力6kWは2分以内・連続運転時は3kW以下
※住宅用蓄電池やエネファームとの併設不可
※太陽光発電システムの発電した電気を電気自動車へ充電不可
V2Hシステムのデメリット
最後にV2Hシステムのデメリットを紹介していきます。
V2Hシステムのデメリットは、「EVの電池劣化を早めること」と「災害時(特に急な大地震)に車両が駐車場にあり、残量が十分あるとは限らない」という2つです。
まず1つ目の電池劣化に関してです。
リチウムイオン電池は、充放電を繰り返すことで満充電できる容量が徐々に減っていきます。
日産リーフでは、初期型はあまり評判がよくなかったのですが、現行の車両になってからは急速充電にも耐えれる電池プログラムなどが組み込まれてるおかげで劣化が少なくなっています。
なおV2Hもある意味、急速放電になるため電池の劣化を早める原因にはなりえます。
ただ、リチウムイオン電池も0%の完全放電・100%の完全充電をしない、等の運用ルールを守って現行リーフであればそこまで心配するほどの劣化はなさそうです。
日産自動車株式会社の公式でも、劣化に関するQ&Aでオーナーの方からの回答が多数載っており、さ参考にしてみてください。
こちらに一部を抜粋して掲載します。
2017年納車:九州地方
初代リーフのときには、10万km或いは5年が保証期間でした。走行距離とともに、バッテリーの容量が減っていき、5年弱で10万kmに到達してフル充電しても110km程度しか走行できなくなったので、交換しました。新型リーフでは、バッテリーの保証期間、走行距離が伸びていますし、フル充電時の走行距離も伸びていますので、心配ないと思います。2017年納車:東海地方
新型リーフを購入して1年4ヶ月が経過しましたが、現在のバッテリー容量はまだ100%あります。ちなみに、旧リーフには4年弱乗りましたが、新型に替える際も100%ありました。当然バッテリーは経年劣化がありますので、いつまでも100%ということはないと思いますが、無理な充電の仕方をしない限り、そんなに急激に劣化することはないと思います。(出典: 日産自動車株式会社「日産リーフ・Q&A」)
つづいて、2点目のデメリットは「災害時(特に急な大地震)に車両が駐車場にあり、残量が十分あるとは限らない」という点です。
当然ではありますが、自動車としても使う場合は家でV2Hを利用できません。
またリチウムイオン電池の性質上、5割程度~8割以下で運用すると電池状態が良好な状態を保てますが、災害時に備えるのであれば残量を気にする必要もあります。
ただ、これは住宅用の定置型蓄電池でも同様のことが当てはまります。
車を、家族の誰がどのように普段使うか?を見極めて、EVとV2Hを導入しましょう。
監修

エコ発事務局 太陽光アドバイザー
曽山
『誠実、スピーディーな応対』をモットーに日々エコ発を運営しています。 お客様への応対だけでなく全国に数百ある提携業者様とのやり取りをはじめ、購入者様へのキャンペーン企画やウェブサイトの改善など、皆様のお役に立てるよう日々業務に取り組んでいます。 卒FIT後の太陽光発電の活用方法など、お困りごとがございましたら、お問い合わせにてお気軽にご相談下さい。
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